鉛が乗っかってるように重く感じる上半身を起き上がらせ横を見るとまだ夢の中にいる彼がいた。
自分の格好、辺りに散らばる衣服を見て昨日彼と何をしたかを思い出し顔の温度が高くなるのがはっきりとわかった。
今更だ。羞恥心が込み上げてきて両手で顔を覆っている自分を本当に馬鹿馬鹿しく思う。
カガリやラクスも最初はこうだったのだろうか。「先輩」である彼女等もこうだったのだろうか。
最初は誰でもある恐怖、恥じらい。自分が初めてだったのに対し、彼は慣れているように思えた。
それが余計自分を不安の底に落としいれる。頭が混乱するまま、快楽に溺れて。私は此処にいるのだ。
カガリやラクスだとこんな不安はあったとしてもすぐ解消されるだろう。相手はあのアスランやキラ。
女性の扱いは慣れているに違いないから一言、二言優しい言葉をかけて「不安」という2文字を吹き飛ばしてくれるはず。
ましてや自分自身の相手はシンだ。優しい言葉などかけてくれるとは思えない。
仮に私の「不安」を話したとしても「は?」と言われるのが目に見えている。
はぁと盛大にため息をはいて私は再びベッドの中に潜り込んだ。
*****
「は?」
「いや、は?じゃなくって・・・やっぱり最初って不安になりませんでした?」
数時間後、私はやっぱり腑に落ちなかったのでこっそりベッドから抜け出し「先輩」であるカガリの元に尋ねることにした。
案の定私が質問すると「は?」と答えてきたので想定内だったはずが少し気が抜けてしまった。
朝7時なのにもかかわらアスランまでもが出迎えてくれたのでお邪魔虫だったのかもしれない・・・とカガリに心の中で詫びを入れておく。
「・・・何が?」
「何がって・・・い、言わせる気ですがカガリさん。」
「いや・・・やっぱりいい。言わないでくれ。」
「最初から言う気はないですよ。」
出されたコーヒーのカップを手にとり口の中に流し込むと干からびていた喉が一気に潤され、
外に出て冷えた体が段々温かくなっていく風に感じるのは気のせいではないはずだ。
表情で私が相当深刻だと感じたのかアスランは読んでいた新聞を前にあるテーブルに置き、「で?」と私が喋れるよう促してくれた。
「で?って・・・アスランならわかってるでしょう?私の言いたいことは。」
「・・・まぁ、何となくだが。」
「カガリさんは?」
「・・・私も何となく、だな。」
「その「何となく」でいいですから何かアドバイスみたいなものくれません?」
「アドバイスって言ったって・・・そんなのわかるわけないじゃないか。」
カガリは私に問いかけられ思いっきり苦い顔をしたと思えば助けを求めるようにアスランをちらりと見る。
視線に、メッセージに気付いた彼は呆れたような目で口を開き始めた。
「あのな、そんなの「慣れる」しかないだろうが。」
「それはわかってる。けどあの痛さに慣れる自分がいると思うと背中がぞわってなっちゃう。」
「・・・・シンが「初めて」ってことはないのか?」
「それは絶対に、ないです。すっごく手慣れてたんですよ?!」
私が言った言葉に二人は、はぁとため息をはくと同時に部屋の扉が開いた。
顔を向けるとそこにはラクス、キラが「アレ、どうしたの?珍しい組み合わせじゃない?」と爽やかな笑顔で立っていた。
「ちょうどよかった!」と私が声にだすと「まぁ、何か大変なことでもありまして?」とラクスがソファに静かに腰を下ろすとキラも彼女の隣に座る。
私の「不安」をもう1度丁寧に目の前にいる4人に話した。話している途中、キラが苦笑しているのは見逃さない、見逃せなかった。
「・・・・要するに、ルナは「怖い」んだよね?」
「え。」
話し終えた後の沈黙を破ったのはキラで、いつもの優しい笑みで私に問いただす。
「怖い」。確かにそうなのかもしれない。「怖い。」と思っていたから「不安」が生まれたのかもしれない。
迷った挙句、ゆっくりと首を縦に動かした。
「ルナマリアさん。」
俯いた顔を上げるように声をかけてきたのは桜色の髪をしたラクス。目を見るとすごく温かな目で私を見ていて安心できた。
にっこり優しく微笑んだ後、澄んだ声で彼女は私に言う。
「「不安」なのは彼も同じです。」
「え・・・。」
「愛しい相手と一緒になるのですから。」
「・・・・。」
「一緒になるのは誰であろうと心地よいモノに感じます。でも、それを「特別」にするのは愛しい人同士です。」
「・・・・。」
「いずれ「不安」から「特別」に徐々に変わっていくと思いますわ。」
ラクスは優しい笑みで私に説き、キラに同意を求めるように「ね?」と首を傾げると彼は「うん、そうだね。」と言う。
何か胸に熱いものがこみあげてきたように思えた。「不安」から「特別」に変えていく。
考えた事もなかった。ただ「一緒になる。」という事に抵抗を感じていた自分がいたのだから。
好きな人同士だからこそ「特別」になれる。
しばらく時がたってから私は心を込めてラクスに対し、「ありがとうございました。」と頭を下げた。
*****
部屋に戻ると未だ彼は眠りについていたのでそっと彼に歩み寄る。
少し揺らすと「んー?」と寝ぼけた声が返ってきたので自然に頬が緩んでしまう。
「シン。」
「・・・ルナ?」
「おはよ。」
「あー・・・・おはよ・・?」
「寝ぼけてないでさっさと髪整えたら?スゴい状態よそれ?」
「うっせー・・・。」
「あ!またベッドに戻らないの!」
「不安」から「特別」に変える。
それは「日常」にとっても同じ事だろうかと、私は思った。
Love Love xxx...
2006.1.15 「不安」+「特別」=「好きな人同士」
2006.11.18 タイトル変え