「ミリィ。」
「あ・・・キラ。」


目の前にあるものに祈りを捧げ、立ち上がろうと足に力を入れた時背後から自分の名前を呼ぶ声がしたので 振り返るとよく知る相手が立っていた。 手に綺麗な花を、持って。


「来てたんだ。」
「うん・・・。」


キラは微笑みながら目の前のものに花を静かに置き祈りを捧げる。 こうして見ていると改めて彼はもういないと実感し涙腺がおかしくなってしまう自分がいた。 上を見上げると青い世界が果てしなく広がっている。その中に、疎らだが色々な形となって浮いている白い雲。 ちょうど太陽の光が自分を照らし、自然に目が細まった。


「・・・ミリィ。」
「え?」
「トールは・・・また僕が戦うって言ったら、・・・怒るかな。」


しゃがみこんでいた姿勢を立ち上がらせ先程の私と同じように空を見上げて彼は呟く。 今にも泣きそうな彼の声。それなのに表情は穏やかさを保っていた。 何となく、何となくだがキラの顔を直視出来ないと思い視線を彼から地面へと移してしまう。 彼・・・トールは、怒るだろうか。 またキラが戦うと言ったら。それともダメだと言って止めるだろうか。 喧嘩は不得意なトールがあのキラを止める・・・。体をはってまで止める事ができるのだろうか? そう一瞬考えたがありえないと思い首を横に静かに振った。
彼は・・・


「怒らないよ。」
「え、」
「トールは、怒らない。」


キラと同様、私も空を見上げる。 青い世界の中を白い雲がゆっくりと動いていた。 それと同じくらいゆっくりと口を動かす。


「トールは笑うよ。」
「・・・、」
「無理して笑って、行ってこいって。言うと思う。」
「・・・そっか。・・・・うん、トールらしいね。」
「でしょ?」


キラと視線が交わり微笑んだ。 雲がゆっくりと動いているのを二人で見る。 ふと、心地よい風が頬を撫でた。 この風は世界中の人々も感じているのだろうか。 別の風となり人々を傷つけているのだろうか。 風は偉大だ。時に激しく時に優しく、自身に吹きつけてくる。 この風を、温かい風をずっと感じていられるように。


「帰ろう、ミリィ。」
「うん。」


「平和」をずっと感じていられるように。
私は・・・・




風は時に優しく、


時に激しく吹いてきて




2005.??.??
2006.11.18 リニューアル