赤服。 それはアカデミー卒業試験で好成績を残したトップ10人しか着る事のできない服。 いわばザフト軍エリートの象徴だろう。 その赤服を着るのは大抵は男だ。 だが彼女は違う。女なのにもかかわらず、赤服を着ているのだ。


「イザーク・・・イザーク!」


気付くと目の前にディアッカが立っていた。 慌てて座っていたイスから立ち上がり上着を羽織る。


「何だ?」
「何だ?、じゃねーだろ。何ボーッとしてんだ。」
「ちょっと・・・な・・・。」
「?」


ディアッカは不思議な顔をしたがまぁいいかと思ったのかすぐに話題を本題へと切り替えてきた。 それを適当に終わらせロビーへ向かおうと自室を出る。 同時にディアッカとも別れた。ふぅと息をつき気を取り直した後、足を早々と前へ進める。


「隊長。」
「シホ。」


今一番会いたくない奴に会ってしまった。
そんなこと彼女は知らずに微笑んで自分の横に並び足を動かす。
彼女は、何も知らない。


「お疲れですか?」
「あぁ。」
「珍しいですね。隊長がそんな顔なされるのは。」
「そうか?」
「ハイ、そうですよ。」


シホは笑顔で自分自身の言葉に答える。 笑顔。その笑顔に何度自分は助けられたのだろう。
「戦場」という世界にいる中。彼女の笑顔を見ると自分自身が犯した罪が許される気がしてならなかった。 こんな風に思っていることを彼女は知らないだろう。 隊長と部下。自分達の関係はそれしかないのだから。


「、シホ。」
「ハイ?」


この胸の思いは何なのか。そう幾度も自分に問いかけた。 何度問いかけても出てくる答えは同じで、何度もその答えに蓋をした。 言ってはいけない。言ったら彼女自身、そして自分自身も困ってしまうから。 「戦場」という世界にいる以上、「軍人」となっている身の自分達にはこの思いは存在してはならないものだ。 伝えてはいけない。決して。 だがせめて、彼女の笑顔に救われていることだけはわかってほしい。 そのことだけお礼を言ったって罰は当たらないはずだ。
「隊長?」と首を傾げるシホの頭にぽん、と手をやり微笑んで言った。

「ありがとう。」



今は、この言葉だけでも



2005.11.19 
2006.11.18 文章付け加え+タイトル変更