放課後とも呼べる時間。小腹が空いたので食堂に向かうと見慣れた後姿を見かけた。
「シーン!」
「うわ!」
「・・・・何やってんのよ?」
「ルナか・・・ビックリさせんなよ。」
「勝手にビックリしたのはそっちじゃない。で、何してんのよ?」
「あぁ。居残りの問題。今日寝ちゃってさ。その罰。」
「何だ。でもシンらしい答え。」
「どういう意味だよ。」
「そのまんまの意味よ。」
いたのは予想通りの人で、同じ赤服のシン・アスカだった。
買ってきたココアを机に置きシンの目の前に座る。そのままじーっと見つめているとふと視線が合った。
残念。ゲームオーバー。
はぁとため息をつくとシンの眉間に皺が寄り「人の顔見てため息つくなよ。」と明らかに気に入らないと思っている声で言ってきた。
ココアを飲み乾いた喉を潤した後、口を開く。
「だって終わっちゃったんだもん。」
「何がだよ。」
「10秒間。相手の顔をじっと眺めて気付かれなかったらセーフ、気付かれたらゲームオーバーってゲーム。知らない?」
「・・・・よくそんな下らないゲームをする気になるよな。」
「あら、意外に面白いものよ?やってみたら?」
「いや、いい。」
話が一旦途切れたので再びココアを口に持っていく。
熱い。舌を火傷しそうになり慌ててココアが入っているコップを口から放した。
カリカリカリ・・・とシャーペンの音が耳に入る。シンが字を書いてるなんて珍しい、と内心思いながら彼の行動を眺めていた。
するとまた目が合う。心底うんざりしたような顔で「あのな・・・」と彼の口が動いた。
「何よ。言っとくけどゲームじゃないわよ。ただアンタが文字書くのは珍しいなって思っただけじゃない。」
「見られるとやりにくいんだよ!」
「・・・・シン。」
「何だよ。」
「自意識過剰って言うのよ。そういうの。」
「っルナ!」
ガタンッと大きな音を出しシンは立ち上がる。ココアが零れそうだったので素早くコップを持ち上げた。
何か言いたげな表情をしていた彼は数秒口を開いたままだったが諦めたのかため息をつきながら再び席につき問題に取り掛かる。
(何だ、つまんないの。)
心の隅でそんなことを考えながら私はまた彼をじーっと眺めた。
(1、2、3、4、5、6、7、8、9、)
カウントダウン開始。と言っても10という数まで辿り着くのはあっという間で。
少し虚しく思いながら「10。」と唱えた。同時に彼の視線と私の視線がまた交わる。
「・・・・何?」
「お前、数数えるなら心の中で数えろ。」
「え、私口に出してた?」
「思いっきり。」
「あら。」
私の反応に彼は「バカな奴。」と言いつつ笑った。子供っぽい無邪気な笑顔。
(あ。)
その時私の心が少し弾んだ。もしかしたら私があのゲームを始めたのはこの顔を見たかったからなのかもしれない。
一瞬そう考えたが蓋をしてコップの中に入っている残りのココアを全部飲み干した。
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2005.11.15 GAME
2006.11.18 リニューアル