黒の教団。レトロ風に作られた建物でも中はどこにでもある家と同じで寒い。 ましてや今の季節は冬。息を吐くと白く空気上にゆっくりと表れた。 凍ってしまうのではないか。 隣にいる彼女をちらりと横目で見て思った。髪は漆黒で肌が白い。教団の服がかなりマッチしていて綺麗だ。 その彼女が今手を擦り合わせて「寒い・・・。」と呟いた時、自分自身と目が合う。 吸い込まれそうな瞳に負けないように「そりゃそうさ。冬だもん。」と返した。


「今年は特に冷えてるね。」
「・・・?いつもとあまり変わらないさ。」
「ラビにはわからなくても私にはわかるの。」
「ふーん。」


彼女との距離が少し広がり、俺が後ろで彼女が前という形になる。 歩くたびに漆黒の髪が揺れ、心臓が高鳴ってしょうがない。


「ラビ。」
「え、あ?」
「・・・・・、コレ。」


突然彼女が振り向いたと思ったら手を差し出してきた。 何だろうと思いながら見てみると何かが乗っている。キラキラと輝く何かが。


「・・・・金平糖?」
「さっき兄さんがくれたの。けど食べきれないからおすそわけ。」


素直に彼女の手に自分の手を近づけ金平糖をとった。 色鮮やかな金平糖はまるで夜空に輝く星のようで。


「明日、任務でしょ?」
「え、あ、あぁ。」
「・・・・そっか。」


彼女は俯いた。この姿を見て自惚れない男は世の中にいないと思う。 顔を覗き込むように彼女と視線を交え名前を呼んだ。


「リナリー。」
「・・・。」
「俺は大丈夫さ。」
「・・・。」
「ちゃんと、帰ってくるさ。」
「・・・そんなの、」
「ん?」


赤子の面倒を見ているかのように彼女の頭を撫でる。 すると俯いたまま彼女が口を開き呟いた。 視線をしっかりと俺と合わせて、目に涙を溜めて。 キラキラと輝いている涙はまるで先程もらった金平糖。


「わかんないじゃない!そんなこと!みんなそう言って帰ってこなかったのよ!」
「わかるさ。」
「どうして?!」


彼女の頬に伝う涙を指で掬いながら言葉を言う。 掬っても掬っても止まらない、金平糖。 口元が緩んでいるのをわかりながら彼女に自信満々で唱えた。


「リナリーが待ってるさ。」
「え、」
「俺の帰り、待ってるだろ?」
「・・・・・。」
「だから俺は絶対帰ってくるさ。」


彼女の頭をぽんぽんと優しく叩く。 口を開いたまま立っている彼女に手にある金平糖を指で入れた。 そして追い抜き様囁く。


「信じて、待ってろ。」


彼女の頬に伝っている金平糖が静かに床に落ちていき寒い室内をさらに冷えさせた。




2005.11.22 離れる場所へ行くけれども絶対戻ってくるから