果てしなく広がる暗闇を目にしながら思う。この闇が私自身を飲み込んではくれないか、と。
目を閉じては映し出される、ある光景。光が差し込む地に足をおいて笑顔で会話している。
(、儚い夢)自分の手を見てはふいに感じることがあった。白く、女性特有の細い指。世界に住む女性と何も変わらない手。
いつからだったろう。この手が、赤黒い汚い血に染まるようになったのは。
「リナリー。」
「・・・、何?」
「そんなに嫌な顔しないでくれません?」
「嫌なものを嫌ってハッキリ示して何が悪いの?」
名前を呼ばれたので振り向くと顔は素直なのか眉間に皺がよった。私の反応をさぞ面白いかのようにくすりと笑って勝手に
私のベッドの上に座る。この部屋の電気はついていなく、光と呼べるのは窓から差し込む月明かりだけだった。
彼をないものと考えて先程と同じように窓の外に広がる闇を見つめていると腕が横から伸びてきたためまたもや眉間に皺がよった。
「ちょっと、」
「僕最近仕事たまってて疲れてたんですよ。」
「だから何よ。」
「癒してください。」
「ふざけないで。」
首元に吸い付く顔と今にも「行為」を始めようとする彼の手を叩いて邪険に扱う。叩かれた彼はと言うと、一回残念そうな顔をして
すぐに不敵な笑みに変わった。窓枠に座っているため体の向きを変えるとすぐに目の前にいる彼と真正面に向き合う形になる。
そうなると待ってましたと言わんばかりに彼は私の顔の横に両手をついて顔を近づけてきた。
「だから」
「知ってますよ。」
「、何をよ。」
「考えてたんでしょう?」
「・・・・」
「バレバレですよ。」
「・・・・・・何のこと?」
一瞬顔を離した彼の目を見据えて言うとふっと笑われる。耳元に口が持っていかれたかと思うと一言、囁かれた。
「やっぱり嘘をつくのが下手ですね。」
その言葉が合図だったのか、彼は私に自分の欲を当て付け始めた。
闇を見て思い出された真逆の光。月明かりが部屋を照らして映すのは汚れた自分自身。そんなことどうでもよくて。
ただ私は誰かに満たされたかったのかもしれない。前のように、誰かに必要とされたかったのかもしれない。
そうしたらこの汚れた手が、白く綺麗に見えるかもしれないと、そう希望をもってしまったからなのかもしれない。
今私は願い通り、誰かに満たされているけれど、誰かに必要とはされているけれど、心の奥底で「違う」と叫んでいる何かが
あるのはきっと、否、絶対、相手が違うから、相手が私の思っている人ではないからなのだろう。
衣服が擦れ合う音とベッドの軋む音と私の艶をおびた声が絡み合い、今の彼の欲をさらに奮い立たせる。
所詮、人は自分の欲望には素直なのだ。最初抵抗したのはこの人が私の期待を裏切らないって
(、知っていたから、)
でも私が、想っている人はやっぱり、あの人であって。今の彼ではないのは、確かなことなのだ。
欲と欲がぶつかりあう中、
私は一人涙を流した
ノアリナリーとノアアレンのお話なんだけどリナリーの気持ちはラビにってことで書きました。
でも別に神田でもいっかなとか思えてきました。初微エロ(って言うのかはわからない)
背景が白なのは内容が「黒」なので。あえて真っ白でパッと見純粋なお話に見えると思ったから、真っ白にしました。
2006.12.21