がたごとと電車が揺れる。窓ガラスが私を反対方向に映し、その向こう側にある木々たちをどんどん追い越していくように見えさす。前にはラビが頬杖をついていて私と同じように窓の外の世界を見て呆けていた。じぃっと見つめるとふと視線が交わる。するとにっこり微笑んで何?と目で言ってきたので首を左右に振って何でもないよと私も微笑み返した。ぴたり、と窓に頭をくっつけて変わっていく世界を見ては思う。懐かしいな。昔はよくこうやって外の世界を見ては兄さんに何を見てるんだい?と聞かれたものだ。1つ思い出してしまうと宝箱の中にある宝石のようにどんどん出てきては止まらない。くすっと笑ってから開けてしまった「過去」という蓋をゆっくり閉じることにした。
「どうしたんさ?」
「え?」
「リナリー、嬉しそうさ。」
きょとん、とした表情になったと思うとすぐに噴出してしまう。肩を震わせて笑う私に彼は首を傾げてもう1度どうしたんさ?と言う。すぅ、はぁと深呼吸をしてから視線を外に反らして口を動かした。
「思い出してたの。」
「何を?」
「ラビと初めて任務に行った時のこと。」
言い終えると同時に目を彼に戻すと苦笑しているラビが映った。そんなことはお構いなしに私は口を開いて「声」を出して彼に伝える。
「あの時行ってくれたでしょ?」
「・・・・・リナリー。」
「守ってやるって。絶対に守ってやるから安心して上へ行けって。」
「・・・・・・・。」
立場がないと思ったのかラビは私からわざと目を反らしていた。それが可笑しくてまた笑ってしまう。リナリー、と勘弁してくれとでも言うような声で私を呼んだのでゴメンねと謝りの言葉を一応述べておいた。
「アレね。スッゴく嬉しかった。」
「・・・・。」
「遅いけど言わせてね。『ありがとう。』」
動いていた電車がゆっくりと止まった。駅についたのだ。閉まっていた扉が開いてファインダーの人が顔を覗かせる。此処で降りるということだろう。黙って頷いて立ち上がり荷物を手にもつとひょい、とそれが消えた。
「ラビ。」
「俺が持つさ。」
たった一言。そう呟いてラビが前へ進んで行ったのを慌てて追いかける。ファインダーの人が先に下車して仲間との連絡をとっているのが出入り口までの通路の窓から見えた。前にある角を曲がれば出入り口、という場所で前の彼の足が止まる。どうしたの?と私が聞くと少し長さがあった私との距離を縮めてラビは私の耳元に口を寄せた。
「・・・・!」
彼と視線が交えるとにっこり、と微笑まれたため顔を俯かせる。今彼は得意げな笑みで私を見下ろしているのだろう。そう思うと頬の温度が僅かだが上がった気がした。
「降りるさー。」
呑気なラビの声を聞いて益々頬が熱くなったと思う。先に駅のホームに足をつけ前へと進んでいく彼の名前を大声で呼ぶと顔だけ振り向かせ笑顔で言った。
「絶対守ってやるから、安心するさ。」
A Proposal...
「リナリー約束してさ。」
「何を?」
「俺がリナリーをずっと守るから俺と結婚するって。」
「・・・・兄さんが何て言うかわからないから・・・。」
「大丈夫!コムイにもう許可はもらったさ!(もらってないけど!)」
「それなら・・・・うん!いいよ!」
2006.4.22
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